−−−−−アイス





「くっだらないなぁ」


　呟いたら、泣かれてしまった。


　や、そんなつもりじゃなかったんだけど。


　だって、あまりにも落ち込んでるから。


　その理由が、せっかく買ったアイスを落としたってだけで。


　そりゃ、手の中にコーンだけが残るのは、余計に沈むけど。


　しかも、せっかく奮発して、おいしい分だけちょっと高いアイスだし。


　散々迷って、ようやく決めた味だし。


　それを一口も味合わないうちに落とせば、泣きたくもなるけど。


　でもウチら、来月から中学生よ？


　アイスのひとつやふたつで、ガキじゃあるまいし。


　そこまで落ち込まなくってもいいじゃん。


　限度ってもんがあるでしょ？


　そんなこの世の終わりみたいな顔されてもさ。


　でもって、何も言わずに、ただ私の持ってるアイスを恨みがましく見られてもさ。


　私にどうしろってのよ？


　落としたのは、私のせいじゃないでしょ？


　思わず呟いちゃった私の気持ちもわかってほしいんだけど。


　ねぇ。


　そうやって目の前で泣かれたら、せっかく無事な私のアイスも食べられないでしょ。


　さすがに、私だってそこまで鬼じゃないってば。


　もう、泣き止みなさいよ。


　まったく、世話が焼けるったら。


　ほらほら、顔上げて。


　まさかあんた、私が一人で見せびらかしながら食べようとしてるとでも思ったの？


　そんなわけないでしょ！


　まったく、何年付き合ってると思ってんの。


　無事なアイスは、二人で半分こ。


　言われるまでもなく、そうするつもりでいるに決まってるでしょ！


　元より、分け合いっこは当然。


　なんのために、あんたが最後まで迷ってたもうひとつの味を私が買ったと思ってるのよ。










＞＞＞　了


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　　02.1.14