−−−−−暇つぶし





「あ〜、暇！」

　空を仰いで叫んだら、怪訝そうな視線が集まった。

　そりゃそうだよな。

　こんな公共の場、駅のベンチで。

　日曜の昼間。

　観光地ってわけじゃない。

　特別、乗り降りが多いってわけでもない。

　でも、普通に行き来するヒトはいるわけで。

　電車は一定間隔で、乗客を吐き出してくし。

　逆に、飲み込まれるためにやって来るヒトも途絶えないし。

　さっきっから、俺は一人っきりになる時間がない。

　別になりたいわけじゃないけど。

　むしろ、ならないためにここにいるんだけど。

　暇であることだけは、どうしようもない。

　だって、ただベンチに一人で座ってるだけだし。

　話し相手はいない。

　本を持ち歩くような趣味もない。

　ついでに、携帯電話さえ持ち合わせていない。

　周りにヒトがいても、それは皆、初めて見る顔ばかり。

　この町で生まれてから、かれこれ２０年になるってのに。

　行動範囲で、唯一のこの駅で、知人に一度も会わないってのもどうなんだろ？

　平日なら、通勤通学のラッシュが始まる時間帯から、ずっと座ってるってのに。

　それは、自分でも馬鹿かも、って思うけど。

　でも、暇だし。

　一人くらい、知ってるヤツに会ってもいいのにな、って思う。

　別に、特別、知人が少ないってわけでもないのに。

　どっちかというと、友達多いってのに。

　なんだよ。

　俺の知り合いは、揃いも揃って、今日は家で過ごしてるってか？

　ただの住宅街中心のこの町で。

　遊びに出るなら、絶対、どんなに近場でも、隣り駅までは出るはずなのに。

　だから、駅にいれば、絶対に誰かには会うって思ったのに。

　なんだよ。

「あ〜、つまんね！」

　いつも同じじゃ、つまんないから。

　ただ、偶然に頼ったらどうなるか知りたかっただけなんだけど。

　偶然に頼って会ったヤツと遊んだら、少しは違うかなって。

　変わり映えのない日常の中で。

　それくらいの変化を与えるのもいいかな、って。

　でも、ハズレ。

　やっぱ、いつもどおりに誰かを誘うのが一番だな。

　新たな出会いもなかったし。

　また変わりない顔ぶれだけど。

　こんな一日を過ごした後なら、ある意味、変化。

　たまの暇つぶし。

　今日のことはネタになる、か？

　そんなことを思う俺は、やっぱ馬鹿かも。

　わかっててやってるあたり確信犯か？

　思いついたら即行動。

　行動開始の時には、そんなこと考えてないんだけど。

　結局、楽しめるだろうことを選んでるには違いなくて。

　選んだからには、どんなにくだらないことでも、楽しむ工夫をするべきだろ？

　だから、どんなに暇な暇つぶしも、またアリってことで。

　明日に繋がる楽しみがあれば、それでいい。










＞＞＞　了


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　　02.1.14